日本義肢装具学会学術大会の取り組み

糖尿病による下肢切断の現状とそれに伴う義肢装具士が担う役割

現在、糖尿病による下肢切断者のほとんどが60歳以上の高齢者です。
切断後の義足歩行には通常の負担に加えて加齢による障壁が重くのしかかり、なかなかうまくいっていないのが現状のようです。

高齢者義足歩行訓練の厳しい現状

横浜市大リハビリ科の調査によると、高齢者の大腿切断は、義足歩行成功率が9%と低く、退院時には義足歩行できていても、日常生活に戻ると義足を放棄してしまう例が多くあるようです。

 

一方、下腿切断での成功率は80%と高く、退院後も使用し続けているかたがほとんど。下腿切断者には膝関節が残存しているので、歩行獲得が比較的成功しやすいです。

 

高齢者の場合、膝関節の有無がその後の歩行獲得を左右します。膝関節より上を切る大腿切断では、その後の義足をつけての歩行が困難となりがちです。

 

また、病院によっても違いがあるようで、一般的な病院からリハビリ専門の病院に移ると成功率が30%以上アップしたという報告があります。高齢者は一般よりさらに手厚いリハビリが必要というわけです。

 

しかし現行の医療・介護制度のもとでは、リハビリを期間内に終えることがなかなか難しくなっています。
というのも義足使用の際には上体で体幹を支える必要があり、片足立ちバランスができるか、本人の意欲があるか、などが重要なポイントとなるからです。

 

大腿切断者は特に、義足と足の残存部との接触面がうまく合わなかったり、体重の移動がうまくできなかったりと歩行訓練がスムースに行きません。

 

加えて高齢による身体機能の衰えや糖尿病による手先の神経障害で器具の装着が自分でできないことも多く、心機能の低下で歩行時に呼吸不全を起こすこともあります。

 

何よりも切断のショックが大きく、リハビリに前向きになれないのも大きいでしょう。

 

さらに、リハビリを担う理学療法士さんに、大腿切断者を扱った経験があまりないのもスムースな訓練とならない要因の一つのようです。リハビリを施す症例の中で切断患者さんの絶対数が圧倒的に少ないからです。

 

このような原因が重なって、高齢者の大腿切断の義足歩行訓練は、現状困難を極めているのです。

 

義肢装具士の担う役割

 

失われた手や足の代わりに義手や義足、身体機能を補佐するギプスやコルセットなど体に装着する装置を作るのが義肢装具士です。

 

器具作製を担うのが義肢装具士で、リハビリを担うのが理学療法士といわれますが、チームを組んでの仕事なので、きっちりした線引きはありません。

 

採寸から製作、装着や装着後の歩行訓練のサポートまで義肢装具士の仕事の範疇です。
特に義足の装着には違和感や抵抗感が多くつきまといます。それらを一つ一つ取り除いていくのも義肢装具士の大切な役目です。

 

当初は絶望感から心を閉ざし、拒絶の態度をとる患者さんもいますが、根気強くかかわって信頼関係を築いていくしかありません。器具のメンテナンスはリハビリ終了後もずっと続くため、患者さんとは長いパートナーとなることが多いです。

 

良い義足を作るには、何よりもコミュニケーションがうまくとれる対人関係づくりが欠かせません。特に高齢切断者に対しては、絶望を解きほぐし、精神面でのサポートも担える資質が求められるでしょう。